不動産業界には紙を重要視する文化が連綿と続いています。新聞織り込み広告、ポスター、アンケートチラシ、ダイレクトメール、パンフレット、電車中吊り広告、完成CGパースなど膨大な印刷物を制作します。もちろんシアター映像をはじめデジタルサイネージ、TVCM、Webムービー、電車内液晶動画広告などの動画も制作します。が、紙の制作物に対して何百回もの修正、何ヶ月もの時間を費やして考えを推し進めるので、紙思考の傾向になるのは当然だと思います。ただ映像を販促ツールとして制作する以上、紙とは全く異なる映像的なロジック、手法を積極的に用いた方が伝達・訴求範囲が広がりより良い相乗効果を生むと思うのですが、プレゼンでご理解いただいても、やはりご担当するプロジェクトを実際に進めていくと紙と同様の情報を盛り込み、映像ではなく、映像に文字を入れた紙と同じ情報を入れる傾向は一部の企業を除いて私が関わった20年ほとんど変わっていない気がします。特にマンションシアター映像は一回見たら記憶以外何も手元に残らないので(17〜8年前はVHSをお土産に渡していましたw)、よりその効果を見据える必要があります。たとえば、横浜駅徒歩10分の物件があったとします。駅近というには厳しく、かといって交通機関を使うほどでもない距離の物件をシアターで描く時、紙思考でいくと空撮に立地を光らせたり、グラフィックの簡易地図にプロットして徒歩10分のテロップや商業施設の写真が入り、ナレーションで「横浜の中心で暮らす贅沢、、、」みたいなチラシを映像化する傾向に走りがちです。が、シーン設定を会社の同僚と横浜駅周辺で終電近くまで飲み、同僚は酔って終電に向かい、自分は歩いて帰るゆとりのシーンを入れるだけで、横浜駅徒歩10分で暮らす恩恵は説明を入れなくても十分伝わり来場者の心を掴みます。実際これは十数年前シアターで描いたシーンの一部で、かなり効果があり物件も短期間で完売しました。つまり『シアター映像は消えもの』なのでチラシやパンフレットの細かい情報を入れても記憶に残らないのです。「この物件いい!!」という実利的な映像手法は深く考えていけば山ほどあるのです。従来のチラシ情報満載のシアター映像から脱却すべきだと切に思います。この話と矛盾しますが、以前マンションシアター映像の販促効果で情報をてんこ盛り入れて即日完売したお話をしましたが、この場合はロケや空撮、丘の上の物件イメージCGムービー、5.1chサラウンドなどただ情報を入れ込むだけでなく費用をかけて飽きさせない工夫をたくさん入れたので、「ここまでこだわってつくっているんだ」感が来場者にわかりやすく無理なく伝わり、その世界に引き込めたのです。今ここでお伝えしたいのは、販促ツールの映像の効果を見極め、ポイントを絞りそこに費用をつぎ込むことが、総合的に販促効果が出るということをお伝えしたいわけです。パンフレットやチラシと同じ情報をパースを加工して動かしたり、文字やモーショングラフィックスで見せて音楽で盛り上げてもお客様の心には残らないのです。ただ映像的にカッコいいだけです。”消えもののシアター映像”の役割の本質は、ここに住むことで得られる歓びやメリットを嘘偽りなく実感していただくことに尽きると思うのですが。。。