幻のマンション

十数年前ある中堅ゼネコンの企業PVでリゾートマンションを撮影したことがありました。とても斬新なマンションで床下に床束が一本もなく、全て収納できる画期的なものでした。リビング、和室、寝室の床が全て収納に使えるのですから、これ以上ない収納スペースです。そのモデルルームを使い撮影したのですが、その広さを映像で伝えるにはどうすれば良いか、という話になり、CGムービーで説明的なシーンも作ったのですが、実感として伝わりにくく、やはりリアルに使っていたもの、収納場所があれば捨てたくないものが良いという意見になり、LPレコード、書籍、楽器、ぬいぐるみ、着物、アルバム、一輪車などなどトラックで2台分くらいを美術さん手配とスタッフの私物を配置して撮影しました。それでもスペースはまだまだありました。その工法を開発したのは別会社でしたので九州の実験施設にも撮影に行き、その発想にますます感心してしまいました。同行したプロデューサーは身内に購入を勧めたほどです。そして新規支社の進出で張り切るゼネコンの熱血女性ご担当者の説明から商品への想いと誇りがスタッフ一同に伝わり、撮影現場は熱気を帯び夜遅くまで続きました。それから3年後、上層部の不正が報じられ、間も無く倒産しました。なんとも残念で切ない話です。

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