マンションシアター映像の奥深さとは何か?———それは、おそらく人生で購入する商品の中で1、2番目に高額な商品のプロモーション映像であり、他のどんな商品とも性質が異なり、購入者の人生に大きく影響を及ぼす暮らしの舞台をご提供する商品であることを重々認識して取り組まなければならないことです。そして、映画を見に来た訳ではなくマンション(モデルルーム)を早く見たい来場者、長期間のリサーチ・交渉でやっと土地を得てプロジェクトが実現する事業主、さらに実際にお客様と接する販売担当者など様々な立場の視点を想像し、『極力自分の思考を入れず無になり、求められる要素やテーマを整理して映像的ロジック・技法・演出術で効果的に組み上げ映像化すること』が一義的なミッションだと考えています。なぜならマンションシアター映像は作品ではなく、現場で上映する”販促ツール”だからです。監督のイデオロギーで台本から組み立てられる映画とは全く別のものですし、繰り返し短い時間で刷り込むCMとも性質が異なります。マンションシアター映像は1回のみの上映で訴求しなければならないからです。ただこのような考えに至ったのは恥ずかしながらここ最近のことです。スタイリッシュな映像やメジャータレント起用が主流だった時代には自分思考、監督目線で能動的に突き進んでいましたが、価値観が多様化した今の時代はもっと冷静に確信の持てる「ものの確かさ」と「信頼」が求められていると思います。シアター映像の性格上、演出的な高揚感は必要なのですが、見終わった後に来場者の心に残すべきものは何か?それは『ここの住まいなら間違いない。』という確信と信頼のような気がします。
次回はマンションシアター映像の地域性について綴ってみたいと思います。